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レベル4飛行におけるドローンの安全性は?現状の課題について解説

法律・制度
更新日:2023.08.04

2022年12月に、ドローンのレベル4飛行が解禁されました。有人地帯上空での目視外飛行が可能になることで、ドローンの活用の幅がさらに広まると期待されています。(※)

しかし「有人地帯上空でドローンを飛ばして大丈夫なの?」「直接目視しないで飛行させて安全性に問題ないの?」と疑問に思われる方も多いでしょう。

レベル4飛行の解禁でドローンをビジネスに活用する上で、安全性が担保されるのか現状の課題や今後の展望について解説します。

※参考:国土交通省. 「無人航空機レベル4飛行ポータルサイト」

新制度でドローンのレベル4飛行が解禁

新制度がスタートしたことにより、ドローンのレベル4飛行が解禁となりました。

従来ドローンの飛行は、目視内での操縦・自律飛行および無人地帯での目視外飛行は可能なものの、有人地帯での目視外飛行(=レベル4飛行)は、全面的な禁止が続いていました。

しかし、以下3つの制度が整備されたことで、レベル4飛行が実現。住宅街や市街地といった、人がいる場所でも目視外飛行が可能となっています。

制度名制度の概要
機体認証ドローンの強度や構造、性能について検査し、安全性を確保する制度。機体認証は第一種・第二種の2つありますが、レベル4飛行には第一種機体認証が必要です。
無人航空機操縦者技能証明ドローンを飛行させるために必要な知識・技能を有すると証明する資格制度。一等・二等の2つありますが、レベル4飛行には一等無人航空機操縦士の資格が必要です。
運航ルールドローンの飛行に必要な運航関連の各種制度。飛行計画の申請や飛行日誌の記録など、衝突防止や機体の安全確保のためのルール作りが整備されました。

こうしたレベル4飛行に必要な法整備が整ったことで、ドローンの有人地帯での目視外飛行が解禁されました。

※参考:国土交通省. 「無人航空機レベル4飛行ポータルサイト」

各レベルの定義と概要

ドローンの飛行はレベル1~4に分けられており、それぞれ可能な飛行方法・範囲が異なります。

それぞれの飛行レベルは、以下のように定義されています。

・レベル1飛行:目視内での操縦飛行
・レベル2飛行:目視内での自律飛行
・レベル3飛行:無人地帯での目視外飛行
・レベル4飛行:有人地帯での目視外飛行

レベルが上がるにつれ難易度が高まるのはもちろん、事故・トラブルのリスクが高まると予想されたため、ドローンの活用を段階的に進められるよう4つのレベル設定が行われました。

ここからは、各飛行レベルの詳細を解説します。

レベル1飛行

レベル1飛行は、目視内での操縦飛行のこと。操縦者が、常にドローンを目視で監視できる状態での飛行です。

レベル1飛行の条件は、以下のとおりです。

・飛行の条件:目視内での操縦
・操縦者の条件:ドローンを肉眼で監視
・飛行エリア:無人地帯および有人地帯
・補足事項:有人地帯の場合は、第三者の立ち入りを防ぐ補助者が必要

操縦者が目視している範囲内で、手動で操縦して飛行させる方法です。

無人地帯・有人地帯にかかわらず飛行させられますが、有人地帯では立入管理措置を講じる必要があるため、有人地帯といっても「第三者の上空」での飛行はできません。

橋梁点検やダム点検など特定人物しかおらず、人の立ち入りを管理できる状況でのみ、有人地帯で飛行させられます。

ちなみに「目視」は肉眼での監視を指すため、モニターや双眼鏡などで見るのは「目視外」となります。山や建物などで視界が遮られ、見えなくなる場合も目視外です。

レベル2飛行

レベル2飛行は、目視内での自律飛行のこと。常にドローンを目視で監視できる状態での、自律飛行です。

レベル2飛行の条件は、以下のとおりです。

・飛行の条件:目視内での自律飛行
・操縦者の条件:ドローンを肉眼で監視
・飛行エリア:無人地帯および有人地帯
・補足事項:有人地帯の場合は、第三者の立ち入りを防ぐ補助者が必要

操縦者が手動で動かすのではなく、自律的に飛行させる方法ですが、飛行範囲は操縦者の目視内に限られます。

無人地帯・有人地帯どちらでも飛行可能ですが、レベル1飛行と同様に立入管理措置が必要なため、第三者の上空では飛行させられません。

農薬散布や土木測量など、第三者が立ち入らない場所での自律的な稼働が想定されます。

レベル3飛行

レベル3飛行は、無人地帯での目視外飛行のこと。目視で監視できない状態で、無人地帯上空を自律飛行させる方法です。

レベル3飛行の条件は、以下のとおりです。

・飛行の条件:目視外での自律飛行
・操縦者の条件:飛行ごとに許可の申請が必要
・飛行エリア:無人地帯(補助者なし)
・補足事項:二等無人航空機操縦士の資格者であれば基本的に申請は免除 ※特定飛行は飛行ごとに申請が必要

操縦者が肉眼で監視できない範囲でも、無人地帯であれば自律飛行が可能です。

目視外での飛行が可能になると飛行範囲は広がりますが、ルート上の全てのエリアが無人地帯である必要があるため、飛行させられるエリアには限りがあります。

離島や山間部上空など使用ルートが制限されるため、実用的な運用ハードルは高くなっています。

レベル4飛行

レベル4飛行は、有人地帯での目視外飛行のこと。目視で監視できない状態で、有人地帯上空を自律飛行させる方法です。

レベル4飛行の条件は、以下のとおりです。

・飛行の条件:第一種機体認証を受けた機体
・操縦者の条件:一等無人航空機操縦士の有資格者
・飛行エリア:有人地帯(補助者なし)
・補足事項:飛行ごとの承認・許可申請は必要(特定飛行を除くレベル3飛行の申請は免除)

有人地帯上空であっても、操縦者が肉眼で監視できない範囲での自律飛行が可能になります。

もちろん飛行ルート上や周辺に第三者がいても問題ないため、市街地での荷物の配送やスポーツの試合・フェスの空撮、イベント上空の警備など、ドローン活用の幅が広がります。

レベル4飛行の解禁でできること

レベル4飛行が解禁されたことで「大勢の人がいる場所」かつ「ドローンが見えない」状況でも飛ばせるため、今まで以上にドローンが活躍しやすくなりました。

特に、物流や測量の分野での活躍が期待されています。

物流業界の場合であれば、現在は倉庫に集められた物資をトラックなどで全国に配達しているのが、ドローンで自動的に配送されるようになります。

個人の玄関先まで荷物を届けてもらえるため、配送業者の人手不足の解消や輸送コストの削減、配送トラックによる交通渋滞の解消、遅配の減少など、多くのメリットが得られるでしょう。

上空からであれば山間部や離島など配達困難地域へも、難なく配送できるようになります。高齢者の「買い物難民」の解消にもつながると期待されています。

既に多くの実証実験が繰り返されており、2023年3月には日本郵便による全国初のレベル4飛行が、東京都の奥多摩町で行われました。(※)

また測量の分野では、今まで人力で行われていたものが、カメラ・センサー搭載のドローンを導入すれば、上空から効率的に土地・建物の測量が行えます。

従来よりもスピーディーかつ低コストで測量できることに加え、人が立ち入れない場所や危険な場所でも簡単に測量できるのが強みです。

もちろん市街地のビルや建設現場など、人が大勢いる場所での測量にも適します。

レベル4飛行が解禁されることで、今までできなかった分野へのドローン活用が進み、今まで以上にドローンを目にする機会が増えるでしょう。

※参考:NHK解説委員室. 「ドローン レベル4初飛行 安全性はどうなっているの?」

レベル4飛行の安全性は?現状の課題

「有人地帯の上空でドローンが飛び交うようになる」と聞くと、安全性に問題がないのか気になる方が多いでしょう。

レベル4飛行は、安全性の認められた機体を、必要な技術・知識を備えた人が操縦する場合しか許可されないため、一定の安全性が確保されています。

とはいえ現状いくつかの課題があるのも事実。ここではレベル4飛行の安全性を解説するとともに、残された課題についても解説します。

機体の安全性

レベル4飛行に使用される機体は、国土交通省もしくは登録検査機関から、第一種機体認証を受けたドローンのみとなっています。

レベル4飛行は有人地帯上空を飛行するため、墜落や落下といったトラブル発生時に、大きな事故となるリスクを抱えていることから、第一種機体認証の取得が必須です。

機体認証は強度や構造、性能が安全基準に適合するか専門機関が検査し、安全性を確保するために行われます。

ドローンの所有者・利用者が、国土交通省もしくは登録検査機関に申請し、検査を受けて合格すれば機体認証書が交付される仕組みです。

第一種機体認証を受けられる機体の基準として、下記5つのポイントが挙げられます。

・電動・自律制御飛行
・地上局で挙動監視・異常時警報表示・緊急着陸などの指示に対応
・非常用パラシュートを搭載
・高いセキュリティー性
・製造工程・部品単位での安全性

安全に飛行できるのはもちろん、もしもの際に対応できる仕組みがあることや、ハッキング対策が行われているなど、さまざまな面からの安全対策が必要となります。

今後の課題としては、長距離飛行を実現するバッテリー・モーターの高性能化が必要とされています。

現状のドローンが連続飛行可能な時間は30〜40分程度のため、長距離の輸送や長時間におよぶ測量などには適しません。

しかし、次世代の航空機用途で高効率のバッテリー開発が進められており、グリーンイノベーション基金を活用した次世代モーター開発が取り組まれているなど、他分野での技術開発の成果がドローンの課題解決にもつながると期待されています。

飛行の安全性

レベル4飛行には機体の安全性だけでなく、操縦者の技量・知識も求められるため、一等無人航空機操縦士のみが操縦できると規定されています。

一等無人航空機操縦士は国家資格で、自動車の免許のように技能・学科両面で試験に合格しなければなりません。

レベル4飛行には、高い操縦技術と知識を国に認められる必要があります。

とはいえトラブルが発生するリスクがあるため、飛行中に機体トラブルが発生した際に備えて、さまざまな安全策が講じられることで飛行の安全性が確保されています。

トラブルへの対処としては、以下のようなケースが挙げられるでしょう。

・飛行を続けられるパターン:飛行ルート近くの人が少ない場所(広場やグラウンドなど)に自動・手動で着陸。緊急着陸地点は、飛行計画立案時にあらかじめ設定しておきます。
・安全な飛行を継続できないパターン:操縦者が、機体の高度を下げて安全な場所に着陸。カメラで真下や前方を確認しながら、安全な場所へ着陸させます。
・飛行自体ができなくなってしまったパターン:パラシュートを開いて降下。地上の被害を最小限にします。

どれだけ安全対策を重ねていてもトラブルが発生するリスクはあるので、もしもに備えた対策が施されています。

今後の課題としては、運用管理システムの技術開発が必要なことが挙げられます。

レベル4飛行の実現により多くのドローンが飛び交うと、ドローン同士や航空機・ヘリコプターと接触・衝突事故を起こさないよう管理する仕組みが必要です。

そこで国土交通省は、複数のドローンの飛行計画や飛行状況、地図・気象情報などを共有する運航管理システム(UTMS)の整備を進めています。

2020年〜2021年度には全国13地域で実証実験を実施しており、実証実験から見えた技術課題・制度課題を踏まえて、社会実装の議論が進められています。(※)

※参考:内閣官房 小型無人機等対策推進室. 「レベル4飛行の実現、さらにその先へ」

プライバシーや騒音対策

今後ドローンの実用化が進んで、日常的に見かける身近なものになると浮かび上がる課題として「プライバシー侵害」「騒音」の被害が挙げられます。

レベル4飛行が解禁されたことで、住宅地や市街地上空をドローンが飛ぶようになれば、搭載されたカメラによるプライバシー侵害の懸念があります。

ドローンは低空を飛び小回りが効くため、いつの間にか住宅内を盗撮されるなど、今までにない被害が出るかもしれません。

また飛行音による騒音被害も課題です。

ドローンは飛行時に蜂が飛ぶような大きな音が鳴り、低空を飛行するため、音が気になったり威圧感や恐怖感を覚えたりする可能性があります。

特に輸送用ドローンなど静かな住宅街を飛行する場合、騒音被害が出るのは大きな問題です。

プロペラやモーターを改善することで、騒音を出さないドローンの研究開発が進められています。

レベル4飛行の今後の展望

ドローンのレベル4飛行は解禁されたものの、まだまだ実用化はされていない段階です。

実用化に向けてさまざまな取り組みが行われている状態で、ドローンの活用の促進・社会実装に向けた事例として、以下のようなものが挙げられます。

・ドローンを活用した配送の実証実験(過疎地・離島・都市部)
・火力発電所設備点検におけるドローンの活用(関西電力株式会社)
・ドローン災害対応システムの構築(愛知県豊川市・新城市)
・鉄道インフラ施設の点検(兵庫県)
・遠隔操作でのオンライン観光(兵庫県)
・離島における医薬品配送(長崎県)
・積雪寒冷条件下における実証(北海道)

(※)

上記以外にも多くの実証実験が行われており、自治体や企業など官民問わず、ドローンの本格的な実用化に向けて着々と準備を進めています。

また株式会社ACSLは、日本郵便が東京都の奥多摩町で実施した日本初のレベル4飛行による配送へ第一種型式認証取得の国産ドローンを提供しました。

郵便局から2kmほど離れた受取人宅へ、GPSを頼りに補助者なしのレベル4飛行が成功。ドローンの実用化に向けた大きな第一歩となりました。

※参考:内閣官房 小型無人機等対策推進室. 「レベル4飛行の実現、さらにその先へ」

まとめ

ドローンのレベル4飛行が解禁されたことで、物流や測量、空撮、点検、警備など、多くの分野での活躍が期待されています。

とはいえ本格的な実用化には、さまざまな課題が残っています。

長時間飛行できるバッテリー・モーターの開発といった技術的な課題や、プライバシー侵害や騒音被害といった課題など、一つひとつ解決していかなければなりません。

ドローンが当たり前のように行き交う未来に向けて、ドローンをビジネスに取り入れようと考えられている方も多いでしょう。

株式会社ACSLでは、セキュアな国産産業用ドローンの開発・販売を行っています。物流やインフラ点検など多くの分野で導入され、実証実験にも使用されるなど豊富な実績を誇ります。

産業用ドローンの導入を検討されている方は、ぜひお気軽に資料請求をお問い合わせください。

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